日本トンデモ祭り         

2月第1日曜日 おんだ祭り (奈良・明日香村)


セックスのワンダーランドにようこそ。
ここは、天狗とおかめがベッドシーンを演じるという、夢の国である。

会場の飛鳥坐(あすかにいます)神社に着くと、あなたをミッキーマウスのように出迎えてくれるのは、祭りのサブキャラクターである「じじい」だ。
こいつは、『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスみたいな面をして参拝客を追い回し、お尻を竹の棒で力まかせに叩くことを職業としている。
お尻を叩くのは厄を追い払うためというが、どう見ても軽い「SMプレイ」としか思えない。
まあ、西洋のSMプレイも、実は背後に黒魔術やキリスト教など、宗教的な意味合いがあるので、「神社でSMプレイ」というのは、きわめて正しい姿勢なのである。

さて、お尻を叩いてもらって気持ちよくなった後は、この祭りのメインイベントである「種付けの儀」だ。
天狗が出てきて、股間に竹筒をあて、自慢げに何度も振り回す。
そして、竹筒に酒を注ぎ、それをご飯の上にぶっかける。
「汁かけの儀」である。
名前まであるとは。
その意味するところは不明だが。




そして、お相手のおかめが登場。
ここからが本番なのだ。
天狗がおかめにキスし、体中を撫でまわし、押し倒し、色んな体位を試す。
すると、周りから卑猥な掛け声が……。
「今年の子は美人やなあ……」(ただし、このおかめは実は男である)
「色っぽいぞ!」
「おい、やりすぎると警察がくるぞ!」
その間も、「じじい」が恋する二人の間を走り回り、ちょっかいをかけている。
「3P」を表現しているのだろうか、そのわりには「じじい」は積極的にプレイには関わろうとしないのはなぜだろう。
謙虚な人柄なのだろうか。
顔のわりにはすがすがしい。

天狗の動きが止まる。
"コト"が終ったのである。
天狗とおかめは満足した顔でよろよろと立ち上がり、おかめはティッシュペーパーで股間を拭き、それを観客に投げつける。
これは要するに、「拭くの神」という感動的なダジャレなのだ。
その使用済みティッシュペーパーを、若い女の子までが争って奪い合う光景は、夕陽に輝いてなかなか美しい。


この飛鳥坐神社は、境内に男性器や女性器の形をしたオブジェが所狭しと並べられ、卑猥な形をした鈴や置物も売られ、さながら「猥褻博物館」のようなところだ。
セックスのディズニーランド。お子様もどうぞ。
しかし、日本の神社の「ご神体」の多くは、男性器や女性器をかたどった物だという(そのせいか、ほとんどのご神体は公開されていない)。
この神社は、それを露骨に、正直にやっているに過ぎない。
かつては日本全国でやっていたという天狗とおかめのベッドシーン、それを今、露骨に誠実にやり続けているのは、もはやこの飛鳥坐神社だけである。
気のせいか、神主の顔もなんとなくスケベだった。


●近鉄橿原神宮前駅より奈良交通岡寺前行きバス飛鳥大仏前下車

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